2015.07.18連載
タイカルチャー基礎知識:タイ人の仕事観
タイ人スタッフと一緒に働いていると、タイ人は家族やプライベートを大切にするのがいいなと感じる一方、もう少し頑張って働いてくれたら、と思うことも多いのではないでしょうか。日本人とタイ人では、互いに育った環境が違うことから、仕事や生活全般に対する考え方にギャップが生まれます。
日本とタイの環境で根本的に違うのは、日本には四季があり、火山国であるため、毎年到来する冬と、いつ襲ってくるかわからない地震、津波、台風などの自然災害に対して、蓄え、準備、心構えをして今日に至っているということです。それに対して、タイには冬がなく天候に恵まれ、自然災害も少ないので、蓄え、準 備、心構えなどの必要がなく、ある意味、平穏無事に毎日を過ごしてきています。
また思想的にも根本的に違います。多くの日本人には強い宗教観はなく、儒教や禅の教えの交った考えのもと、個よりも社 会を重んじ、全体の管理と秩序の中に自分を合わせ、恥の文化を継承しています。日本人同士ですと、この統一のとれた考え方が常識であり、お互いに説明しなくても解り合えます。一方タイ人は、生活の一部に宗教があり、全体よりも個を重視し、それぞれの気持ちや心に重きをおいています。さらに、多民族国家のため常識もバラエティーに富んでいて、解っているはずのことでも口に出してお互い説明する必要があり、その上で解り合います。
ですから、「こんなことは言わなくても解っているだろうに、何で仕事が終わっていないのに帰宅するのか」、「こんなことまで口に出して説明したら、相手を馬鹿にしていると思われないだろうか」などと考える必要はありません。何でも丁寧に説明し、相手に対して心の中で抱いている希望や感じていることを伝えてください。それがお互いを理解し、ギャップを解消する道であり、タイ人スタッフとうまくやれるコツだと考えます。
住田 千鶴子 スミタ・カルチャー・センター&プロダクション主宰。長年にわたり、日本人駐在員や日系企業のタイ人従業員向けのトレーニング講師、国際会議での通訳・翻訳業務に携わる。東京ディズニーランドにて会議通訳・コーディネータ ー・アシスタントマネージャーとして18年活躍。初来タイは50年前の1963年。日本人駐在員の必須マナーについての著書が12月27日に出版予定 (SUMITA Limited Partnership出版)。 http://sumitaschool.com/