ふるさとのこだわり
しみじみと日本情緒にあふれ、親しみやすい雰囲気の居酒屋「ふるさと」。埼玉県秩父地方の郷土料理を中心に、刺身、寿司、鍋、季節の一品と名物を数えたらキリはないが、やはり一番人気は地元秩父より届く山菜を使った料理に尽きる。
ふきのとう、こごみ、たらの芽など、山の息吹をシンプルに堪能する「山菜の天ぷら」はマストオーダー。肉厚な山菜を覆う黄金色の衣はどこまでもサクッとふっくら、食べ進めるほどにほろ苦さとすがすがしい香りが立ち上り、なんとも滋味深く格別の味わいだ。人気の双璧をなすのは「山菜のおひたし」。薄味仕立てが素材の力を引き立て、これまた絶品。
揚げたてがたまらない山菜の天ぷら(Sサイズ330B~)、山菜のおひたし(390B)も沁み入る旨さ
何より嬉しいのは、春の香りをぎゅっと閉じ込めた「ふき味噌」がタイに居ながらにして楽しめること。採れたてのふきのとうと甘味噌で作るふき味噌は、酒のアテに白いご飯のおともにと大活躍。味噌の甘辛さの中にほのかな苦み、まろやかさが複雑に絡まりあい、目からウロコの感動を与えてくれる。
葉がぎっしり詰まり、見るからに甘さを蓄えた大きな白菜を筆頭に、多くの新鮮野菜やこんにゃくも秩父から取り寄せる。それら旬材で作る煮つけやきんぴらなど、手作りのおばんざいも同店の自慢。ちょっとずつ盛り付けて酒との組み合わせを楽しむもよし、ご飯セット(130B)と合わせれば自分好みの定食にカスタムも可能だ。
オーナーの実家から届く野菜はみずみずしく、迫力満点の大きさ!
「すいとんは秩父の家庭の定番食。根菜やキノコをたっぷり入れて大鍋で作るんですよ」と秩父出身の店員浅見さん。旨み満載のスープもさることながら、それを吸ったモッチリ食感のすいとんがすこぶる美味。体も心も温まる一杯だ。暑い夏を乗り切る知恵が詰まった「冷や汁」もぜひ注文したい。ごま味噌ベースに、みょうが、きゅうり等の薬味をキリリと効かせているのが秩父流。そうめんを入れていただくかご飯かを選べる。締めの一杯にもさっぱりでいい。
広島産の牡蠣や北海道産のスルメイカなどの高級店顔負けの魚介を使ったお造りや焼き魚、にぎり寿司や巻物までリーズナブルに楽しめる。カジュアル接待や仲間内の飲み会であれば、肉も魚も野菜もまんべんなく味わい尽くせるコース料理に舌鼓、というのも手だ。オーソドックスで優しい味の和食はどれも酒飲みのツボを押さえており、広く万人に喜ばれること間違いなし。
肉も魚も名物も…とバランスよく味わうコース目当てのファンも多い
一人客もふらりと立ち寄るカウンター席のほか、畳敷きに座布団、砂壁とどこか実家にも似た座敷席、掘ごたつ席、大人数でもゆったり集える大広間も完備。どこでも腰を下ろした瞬間「日本に帰って来た」と懐かしさがこみ上げてくるはず。
落ち着いた雰囲気の内装は老舗ならでは。最大30名で利用可
日本津々浦々の酒が定番から流行まで一通り、気軽な価格で揃っているのも魅力のひとつ。美酒と素朴なつまみを傍らに、BGMの演歌に耳をそばだてれば、いつしか気分は日本に居るかのよう。一年を通して春夏秋冬の山の幸、海の幸が大衆価格の良心店。これを異国で味わえる奇跡に感謝したい。