2015.02.3連載
タイカルチャー基礎知識:タイの新年とお正月
タイの新年は、日本と比べると、質素に感じられるかもしれません。それは多民族国家であるタイでは、さまざま な民族と宗教が混在しており、1年に5回もの正月があるからです。なかでもタイ人にとっては4月13日~15日のソンクラーン祭り(水掛け祭り)が正月にあたるので、1月1日はどちらかというとカレンダーの年号が変わるぐらいの程度なのです。仕事も年末ぎりぎりの12月30日まで行い、31日と1月1日は休んで、 2日から仕事を始める会社も多いのです。今回の年末年始は、土日とつなげて5日間休みだった会社が多く、例年よりは長く休める年末年始になりました。
日本人にとっては質素に感じられるタイの新年ですが、敬虔な仏教徒の多くは12月31日から1月1日にかけて、夜通しお寺で僧侶と共に読経をして座禅を組みます。お寺によって形式は異なりますが、月明りの下ロウソクに照らされる僧侶と信者の輪がお堂を囲む光景は荘厳です。夜が明け1月1日になると、僧侶は新年初の托鉢(たくはつ)に臨みます。托鉢とは、人から食べ物を施してもらい、一日をその食べ物だけで過ごす仏教の修行です。仏教徒は托鉢などの善行を通じて徳を積みます。お寺によっては、タイで縁起の良い数字とされる「9」にかけて 9,999名の僧侶による托鉢が行われます。また、幸運をもたらす御札を参拝客に配ったり、お浄めの聖水をかけてくれるところもあります。
船に乗って9ヶ所の寺へ初詣でに行くのもタイ人には人気です。チャオプラヤー川のタクシン橋から出る船で、川沿いにある9ヶ所の寺詣でに夫婦で参加したことがあります。タイ語でワット・アルンと呼ばれる暁の寺は、訪れたことがある方も多いと思いますが、その他の小さなお寺もそれぞれ特徴が異なり楽しむことができますので、この機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
住田 千鶴子 スミタ・カルチャー・センター&プロダクション主宰。長年にわたり、日本人駐在員や日系企業のタイ人従業員向けのトレーニング講師、国際会議での通訳・翻訳業務に携わる。東京ディズニーランドにて会議通訳・コーディネータ ー・アシスタントマネージャーとして18年活躍。初来タイは50年前の1963年。日本人駐在員の必須マナーについての著書が12月27日に出版予定 (SUMITA Limited Partnership出版)。 http://sumitaschool.com/