2015.08.10特集
タイの華人:ヤワラートの中華料理店から紐解くルーツ
タイで働いていると、“中華系タイ人”という言葉を聞いたことがある人も多いのでは。 (タイ語では、チャオタイチュアサーイジーン)。
現在のタイの政治においても、経済においても、中華系タイ人(華人)は重要な位置を占めている。そんな彼らのルーツとは?
ヤワラートにひしめく中華料理店の歴史から紐解いていこう。
中華街ヤワラートは1782年には形成され始めた
世界でも最も古い中華街の一つに数えられるヤワラート。タイには、中国からの移民は大昔からいて、タイ最大の中華街ヤワラートは1782年には形成され始めていたとされる。1882-1892年の移民数は約17万人で、1918-1931年がピークの約132万人だった。
当時の華僑は今のように裕福ではなく、港湾の荷役、道路工事や建設現場の労働者が大半だったが、貿易高の増加と勤勉さ、華僑同士の結束力で財をなす者も増えた。その後、第2次世界大戦の勃発やタイ政府の移民政策で多くの華僑が帰化。移民はタイに同化し溶け込んだ。
このため、タイには国籍取得した“華人”が多く、中国国籍のままの“華僑” はそれほど多くない。近隣諸国の華人と違い、タイは中国のアイデンティティーを持たない華人も多い。そして、現在は華人3世や4世がタイのビジネス界、政界などあらゆる場面で活躍をしている。タイの財閥のほとんどは華人が創業者である。
身近なところではセブンイレブンなどを展開するCPグループだ。元は小さな貿易会社だった。農民銀行(カシコン銀行)やバンコク銀行、セントラルデパートもまた華人が興した。政治においては今のタイ情勢を語るには外せない、タクシン・チナワット元首相も華人である。昨今の政治騒乱の裏では華人同士の利権問題も絡んでいるとされるほど、華人はタイに浸透している。
貧しさから故郷を捨て、ゼロからタイ生活を始めた華人の先祖たち。タイ華人には苦労とサクセスが必ず表裏一体になっている。そんな彼らの原点のひとつが、タイ国内に無数にある中華料理店なのだ。
中華系移民のタイプ
1851-1957年の中国系移民流入時代にタイへ来た中国人をタイプ別に分けると次のようになる
広東省や福建省周辺の出身。団結力が強いとされ、 中国から外国に移民した人の中で最も多い。 潮州系
広東省潮州市周辺の出身者。働き者で堅実な性格 だとされ、タイへの移民で最も多いグループ。
香港に近い広東省出身者。競争心が強く、商売上 手。賭博好きな性格の人も多いとされている。 福建系
福建省や台湾出身者。その中でも沿岸沿い出身者 はオープンで、内陸部の人は排他的と言われる。
中国南部の海南島やその周辺の出身者。中国では 南国になり、性格はおおらかでのんびりだとされる。
中華料理の特徴
中華料理は、地域別に大きく8つに分かれる。
北京料理の原型で、宮廷料理だったこともあり見た目の豪華さなどが特徴 。北京ダックや水餃子、ピータンなどがある。 江蘇料理
上海、南京、揚州、蘇州エリアの料理で、全体的に淡泊で、素材を活かす味つけ。小籠包や揚州炒飯などがある。
浙江省発祥で、味つけはやや塩辛くさっぱりとしている。東坡肉(豚の角煮のようなもの)が有名。 広東料理
広東省や香港が中心で広州や潮州 料理も含む(潮州料理を含むかは諸説ある)。フカヒレや飲茶、ワンタンがよく知られる。
内陸部の安徽省発祥。山や長江などで採れる素材を使い、油多めのこってり味。中国ハムとすっぽんの煮込みなど。 湖南料理
湖南省発祥で、毛沢東も愛したとされる。中国で最も辛い料理とされ、辛さと酸っぱさが同居する。酸辣湯が有名。
建発祥だが、広義では台湾、客家、海南料理も含む。海と山があるので、素材も豊富なのが特徴。 四川料理
四川省の郷土料理で、雲南や貴州料理も含める。トウガラシと山椒で痺れる辛さがあり、有名なところで麻婆豆腐や回鍋肉、担々麺。