2017.03.4連載
タイカルチャー基礎知識:タイ人の日本人観
私がタイに来た頃のタイ人の日本人観は、今とはだいぶ違っていたように思います。日本人の数も少なかったからでしょうか。日本人というだけで一目置いてくれていた気がします。しかしこの30~40年の間に、タイに暮らす日本人の数が増え、それとともにタイ人の日本人観が変わってきました。 この間に、多くのタイ人が日本に留学し、ビザなしで2週間以内の日本訪問が可能になると、さらに多くのタイ人が日本を訪れるようになりました。メディアを通して日本に関する情報がたやすく手に入るようになると、日本と日本人に対する知識も深まり、より近しい感情を持ってくれるようになりました。それと同時に、以前のように日本人というだけで尊敬の念を持つという意識は薄れたようにも感じます。でも今でも変わらないのは、日本人は仕事熱心で、真面目で親切な、そして自国に対して誇りを持っている国民だ、という日本人観だと思います。 また、タイの人々と共にボランティア活動を行う人、タイで俳優業や歌手業などをしている人など、これまでにはなかった職種の日本人も増えています。さらに、リタイアした日本人がロングステイ・ビザを取得してタイに住むようになったり、日本の経済不況に伴いタイで就職する日本人が増えたり、駐在員の幅も広がりました。タイに暮らす日本人が増えるにつれ、なかには品行方正とは言えない日本人がいるのも事実です。 しかしながら、タイで頑張っている日本人たちをタイの人々は温かく受け入れてくれています。現地採用であろうと、駐在であろうと、ロングステイであろうと、日本人であるということに変わりはありません。今後もタイの人々に快く受け入れてもらい、良い関係を継続していってもらいたいものです。そのためには、お互いの違う所は認め合い、尊重し合い、良い関係を築くことで、タイの人々に良い日本人観を持ってもらえるのではないでしょうか。
住田 千鶴子 スミタ・トレーニング・センター&コンサルタント主宰。長年にわたり、日本人駐在員や日系企業のタイ人従業員向けのトレーニング講師、国際会議での通訳・翻訳業務に携わる。著書「タイ国とタイ人」は紀伊国屋書店等にて販売中。 http://sumitaschool.com/