2017.02.3連載
タイカルチャー基礎知識:万仏節(マカーブーチャー)
毎年タイでは、陰暦3月の満月の日は万仏節(マカーブーチャー)という祭日です。この日は、仏誕節(ヴィサカーブチャー)や三宝節(アーサラハーブーチャー)と並び、仏教にとって大切な祭日で、今年は2月11日(土)にあたります。 その昔、1,250人もの釈迦の弟子たちが何の前触れもなく、釈迦に会うために偶然に集まったという奇跡を祝うのがこのマカーブーチャーの日です。集まった弟子たちは釈迦の訓示を聞き、全員が悟りを開くことができたと言われています。この日は、各地のお寺に多くの人が集まり、読経に耳を傾けるだけでなく、お寺に寄付をしたり、鳥や魚を放したり、様々なタンブン(寄進)を行います。夜になると、集まった人々は僧侶と共に、火を灯した線香とろうそく、蓮の花を手に、本堂の周りを3回まわります。満月が輝く中、ろうそくの灯りの列が動いていくさまはとても美しく、見ているだけでも厳かな気持ちになります。 タイ全土には35,000近くの寺があると言われていますが、中でもマカーブーチャーで有名なのは、サラブリー県にあるプッタバート寺です。そこには釈迦の足跡が祭られ、マカーブーチャーの日は縁日となり、多くの人が全国各地から訪れます。 もう1か所、個人的にお薦めしたいのが、14~18世紀のアユタヤ王朝時代からある古い寺院、ワット・サケット(黄金の丘)です。“サケット”は王室用語で「王様の散髪」という意味で、現チャクリー王朝のラーマ1世となったチャオプラヤー・チャクリーが、この寺院で散髪してから即位式に臨んだことからこの名前が付いたそうです。344段のらせん階段を上り、黄金の丘の上にたどり着くと、市街の絶景を目にすることができます。そして満月の下、ここで行われるマカーブーチャーの儀式は、まさに荘厳そのものです。ぜひ一度、足を運んでみて下さい。
住田 千鶴子 スミタ・トレーニング・センター&コンサルタント主宰。長年にわたり、日本人駐在員や日系企業のタイ人従業員向けのトレーニング講師、国際会議での通訳・翻訳業務に携わる。著書「タイ国とタイ人」は紀伊国屋書店等にて販売中。 http://sumitaschool.com/