2016.11.5連載
タイカルチャー基礎知識:タイ人のジェンダー
先日、語学講師を派遣している日系企業の工場を見学した時のことです。従業員用トイレの前で、工場長がカートを停めて、「これも新しい工場ならではの最近タイで一般化しつつある設備備の一つです」と言われました。見上げるとそこには3つの表示がありました。赤の女性用マーク、青の男性用マーク、そしてもう一つ、女性用マークと男性用マークが半分ずつ合体したマークが付いていました。 昨今、日本でもLGBT(性的少数者)の人たちが働きやすい環境を整える企業が増えてきているようですが、タイは日本よりずっと先進的で、以前から性的少数者の社会進出が進んでいると思っていました。ただ、実際にこのトイレを見るまではあまり実感がありませんでした。そこで、工場長に聞いてみました。「こういった人たちは多いのですか?彼らと仕事をしてみて問題などありますか?」答えは意外とあっさりとしたものでした。「職場では他のスタッフと何ら変わりなく、特に問題を感じたことはありません。ただやはり、トイレの問題が一番大きかったので、弊社では彼らも入りやすいように、そして他の人たちも納得できるように、3つのトイレを用意したわけです。日系企業ではトムボーイやニューハーフの人が多く働いているようです。もともと東南アジアでは女性の方がよく働くと思っていましたが、ニューハーフの人たちも女形がよく働き、トムボーイの方が一般男性よりもよく働くようです」とのこと。 先日、バンコク大学長を長年務められたDr.マタナーをインタビューした際にも、昔からタイでは息子は母親から甘やかされて育てられ娘の方が厳しく躾けられるので、勉強もよくするし、男性より学力や能力が高くなったのだろうとおっしゃっていました。バンコク大学ではトムボーイとニューハーフに対して、大学として許可できる服装規定を提案しているそうです。多民族国家のタイは社会の柔軟性があるように感じますが、あなたはどう思いますか?
住田 千鶴子 スミタ・トレーニング・センター&コンサルタント主宰。長年にわたり、日本人駐在員や日系企業のタイ人従業員向けのトレーニング講師、国際会議での通訳・翻訳業務に携わる。著書「タイ国とタイ人」は紀伊国屋書店等にて販売中。 http://sumitaschool.com/