そば切り 五の字のこだわり
うまい蕎麦屋を知っておくことは、ビジネスマンの嗜みと言っても過言ではない。
蕎麦好きに愛される蕎麦屋としてトンローに店を構える「そば切り 五の字」は、まさに
押さえておきたい一軒だ。
お店の顔は、東京の名店「一茶庵」で修行を積んだ店主が毎日打つ二八蕎麦。
一箸たぐれば豊かな蕎麦の香りが鼻に届き、一口すすれば清涼感と微かな甘みが全身を駆け抜ける。
蕎麦つゆは、たっぷりの厚削り本枯節と羅臼産昆布、大分産椎茸で引いた出汁を1か月熟成させた返しと合わせた上品な風味。
口の中に広がる何重ものハーモニーに、蕎麦をたぐる手は加速するばかり。
言葉を発するより、「うんうん」と静かに噛み締めたくなる円熟な味わいが客を魅了してやまない。
美味しさの秘密は、手間を惜しまない行程にある。
一般的に蕎麦を打つ店では、既に挽いてある蕎麦粉を使うか、より風味の良い蕎麦を作る
ために蕎麦の実を石臼で挽いて使うかのどちらかが多い。
しかし、鮮度と風味に徹底してこだわる同店では、さらにもう一段階前の玄蕎麦(殻が付
いた状態の蕎麦の実)を使用。
当然、玄蕎麦は殻を剥く分の手間暇がかかるが、フレッシュな風味が味わえる。
「より美味しい蕎麦を目指し、辿り着いたのが玄蕎麦でした。磨き(殻を剥く作業)に時
間はかかりますが、そこにかけた分、お客さんからいい反応が返って来る。それが何より
です」と店主は語る。
看板メニューの二八せいろ(冷)をはじめ、鴨せいろ(冷)、かき揚げそば(温)、鴨南
蛮(温)など10種の蕎麦を提供。
加えて、酒の肴にも余念がない。
熱した石の上に載せた香ばしい一皿、石焼きそば味噌(180B)や小田原名産「丸う」の板
わさ(200B)、そば屋のポテサラ(150B)など、蕎麦屋ならではのメニューのほか、薫製
風味が漂う鹿児島厚削り鰹節とねぎ添え(180B)や3個の地鶏卵にたっぷりの鰹出汁で仕
上げた出汁巻き玉子(200B)など、手の込んだ一品料理が並ぶ。
店主曰く、吞ん兵衛にはもちろんのこと、普段お酒を飲まない人でも思わず飲みたくなる
という。
通のごとく、蕎麦を食べる前の一杯を楽しみたいものだ。
鴨鍋が付いた接待コースもあり、個室での宴会利用もおすすめだ。
トンロー・ソイ18の少し先、ソイ・タラロム2を入ったところにひっそりと佇む大人の隠
れ家。
訪れればきっと、誰かに紹介したくなる。その理由は、直接店で確かめてほしい。