2016.03.21連載
タイカルチャー基礎知識:寄進・タムブン
「タムブン」という言葉を聞いたことがありますか? タムブンは“徳を積む”という意味で、タイでは、年末や正月、会社設立○年などの節目に、僧侶へ寄進をして、 家族や社員の幸せ、健康、さらなる成功を祈願します。さら に敬虔な仏教徒になると毎朝、托鉢に廻る僧侶に食事を寄進するタムブンをします。タイの上座部仏教の修行僧の生活は信者たちのタムブンによってまかなわれています。早朝、僧侶は自分の手相が見えるぐらいまわりが明るくなると、お櫃をたずさえて托鉢に出ます。道端で待つ信者たちは、約3種類のおかずとごはん、お菓子をビニール袋に小分けにしたものを僧侶のお櫃に入れてタムブンをします。それに対して僧侶たちは、 読経をして信者たちの幸せと成功を祈ってくれます。
この他にもタイ人は生活の中で、度々タムブンをしています。 例えば、レストランで食事をした際に割り勘で余ったお釣りを 「タムブンしよう」と言ってチップとして渡したり、タクシーの運転手がお釣りの持ち合わせがない時に、多めに払って「マイ・ ペンライ、釣りはいいよ。タムブンするよ」と言ったりするこ ともタムブンの一種です。
タムブンは、金品を僧侶やお寺を通して天に対して寄進をする、というのが、基本的な考え方です。ですから、先ほどの例では、レストランの従業員やタクシーの運転手を通して天の神様に寄進をしている、という考え方なのです。時折、割り勘で数バーツ違っただけで目くじらを立てんばかりの日本人を見ると、その金銭に対する計画的で正確な考え方が、時には情を欠いたもののように感じてしまうことさえあります。宗教心の深いタイ人にとっての現世の行為であるタムブンは、来世での自分のためと考えると同時に、明日の人生をより楽しく、豊かにするために、日々徳を積むものだと考えているのです。
住田 千鶴子 スミタ・カルチャー・センター&プロダクション主宰。長年にわたり、日本人駐在員や日系企業のタイ人従業員向けのトレーニング講師、国際会議での通訳・翻訳業務に携わる。東京ディズニーランドにて会議通訳・コーディネータ ー・アシスタントマネージャーとして18年活躍。初来タイは50年前の1963年。日本人駐在員の必須マナーについての著書が12月27日に出版予定 (SUMITA Limited Partnership出版)。 http://sumitaschool.com/